nemurisoro





 はじめて見る寝顔を、私は心臓をばくばくと轟かせながらそっと覗き込んだ。
‥‥なんだか今にもぱちりと目を開けて、あの厳しい蒼灰色の瞳で「セオデン殿!」とたしなめてきそうで、ちょっと恐い。けれど………こうしてまじまじと見れば見るほど本当に。
「あなたはなんて綺麗なんだ……ソロンギル。」
 もしかして、あなたはエルフではなかったのか。今は長い髪の下に隠されていて見えない耳には、あの種族特有のしるしが刻まれてはいまいか。
 その波打つ黒髪をかきあげ、直接に耳に触れて確かめたいという衝動を、私はすんでのところで押さえ込んだ。