ぐったりと弛緩してエオメルの口づけを受け入れていたアラゴルンは、霞んだ視界のなかに、戻ってきた男の姿を認めて、緩慢に瞬いた。溜まっていた涙がこぼれ、目尻からつっと伝わっていくのを、近づいてきたファラミアの指が優しく拭う。
「先走りは協定違反ですよ、義兄上。……最初に陛下を泣かせるのは、私だと決めておりましたのに。」



(「月蝕」より抜粋)