雲ひとつなく晴れ渡った空を背景に、庭の中心にしつらえられた噴水が、きらきらと虹色の光を放っている。その噴水の脇、白の木の幹によりそうようにして、この国の王がひとり、ぼんやりと佇んでいた。
空を見上げていた彼が、こちらに気付いて笑顔になる。大股に近づいていってひとしきり久闊を叙する抱擁をかわしたあと、レゴラスはふとあることに気付いて、きょろきょろと周りを見渡した。あたりがずいぶんと静か――人間がいっぱいに立ち働いているであろう王宮の中庭にしては静かで、噴水の水音のほかは何の物音もなく、しんと静まり返っているように感じられたのだ。
「ええと、アラゴルン……今日は、誰かお付きのひとは一緒じゃないの? ひとりなんだね。」
問いかけると、問われた男は、柔らかく微笑んでレゴラスを見かえした。
「たまには私だって、ひとりで息抜きくらいするよ。」
(「Lethe」より抜粋。指輪のレゴとアラの二人で「銀○鉄道の夜」の雰囲気を、ほんのヒトカケラだけでも再現してみたい!と足掻いてみた話です。(もちろん当たり前に玉砕。できるわきゃなかった。)
このシーンは、3130年の王様を、レゴ視点で見たものです。
既にエオメルは亡く、ファラミアもいない。アラゴルンは前と変わらず穏やかに微笑んでいますが、そのまわりには、彼と時代を同じくした人間の姿は既にありません。その寂寥に、レゴラスは気づけないでいます――この時点では、まだ。)