レゴラスは、男達の顔を見渡した。見返してくる野伏達は皆丈高く、痩せて厳しい顔立ちをしているが、オークの血がこびりついたそのどの顔からも、一種独特の、古の血に連なる典雅さといったものが見てとれる――そのうちの幾人かは、彼等に劣らぬ武勇を見せた王子に好意を隠さず、にやりと笑いかえしてきた。
「それでは君達が、北方に住まうというドゥネダインの一族なんだね。」
 そういえば五軍の戦いの際、湖の街エスガロスに赴いた際にも、あまたの人間達を見たように思う――けれど、同じエダインの一族とはいえ、粗末な風体の奥に隠したその魂の輝きの、なんという違いだろうか。
――これが、森の父上が会えと仰った、ドゥネダインの一族と――その長たる人物。
 密かな感嘆を隠した王子の目が、再び若者の――アラゴルンの目とかちあう。まじろぎもせず交わしあった視線は、互いをはかりかね、ややあって、何事もなかったかのようにぎこちなく反らされる。まだ、お互いに何者でもないのだ――今は、まだ。
 エルフの王子に、確かな予兆が訪れたことはまだない。それでも彼の心のうちには、密かな確信が芽生えはじめていた。
――この、アラゴルンという名のひとの子が、やがては自分の運命を大きく動かす者になるであろうことが――。