「--あなたはよく頑張った。ローハンの次期の王は、強いお子であらせられる。」
なにかがどっと込み上げてきて、塩辛い涙の味で私の鼻の奥を刺激した。
似たような賛辞は、いつも耳にしてきたはずであるのに。言葉をかえ修飾をかえても消えることのない、それらの言葉に含まれた追従やおもねりといったものが、いつも私を苛立たせたのに。
彼の言葉はひどくすんなりと、私の胸に沁みとおった。
それは、言ったのが彼だったからかも知れない。彼は、言葉どおりの意味で言ったのだ、と。
ソロンギルだから信じられたのだ。
私は陶然と眼を閉じて、彼の体温を味わった。
どうしよう。
こんなにも、胸がいっぱいになるほど。
--彼が、好きだ。大好きだ。
どうしようもなく、好きだ。
‥‥それは、私がはじめて自覚した、他者への好意だった。
(「Remmirath」 SSより抜粋)